黒い翼
始まりはあたしが小学校に通っていた時。
一つ下の妹、梗にベタ惚れした上級生がいた。
彼は瀬来藍と言った。
彼は隠していたのだろうが、あたしからしてみればバレバレだった。
他の、あたし以外は全くといって気づいていなかったが。
梗はあたしの自慢の妹だった。
可愛くて、天真爛漫で。
仏頂面で子供なのに、幼さがないあたしとは正反対だった。
そんな梗にほれこんだ彼は、事ある度にあたし達に絡むようになり、いつしかそれが当たり前になっていた。
いつも3人でいることが当たり前。
梗を守るのがあたしではなく、彼が当たり前。
彼は有名な中高一貫校へ進学し、梗はそんな彼に勉強を教わってそこへ行こうと決心した。
そんなものに丸っきり興味のないあたしは、自分が入れる学校へ進学した。
高校生になるはずだった彼が、梗の為に一年だけ留年したことを聞いた時は、流石にアホだと思わざるを得なかった。