黒い翼


シキと彼氏彼女の関係になって3ヶ月くらいがった時。


家の玄関には梗の靴と彼の靴があった。


昔からよくあることだったので、それほど気に留めはしない。


ただ、空気が重たかった。


不思議に思って、梗の部屋に行くと、梗の血の匂いがまとわりついた。


食事が済んだことは一目瞭然だった。


おかしいことは何もなかった。


彼の腕の中にいる、梗が目を覚まさないことを省けば。


彼が狂ったように妹の名前を呼んでいることを省けば。


血の気のない梗を省けば。


梗の腕に〝藍〟と彫られた傷を省けば。


彼の口のまわりに、梗の血がついていることを省けば。


全てを悟ったあたしの中の、何かが切れた。
< 49 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop