黒い翼
シキと彼氏彼女の関係になって3ヶ月くらいがった時。
家の玄関には梗の靴と彼の靴があった。
昔からよくあることだったので、それほど気に留めはしない。
ただ、空気が重たかった。
不思議に思って、梗の部屋に行くと、梗の血の匂いがまとわりついた。
食事が済んだことは一目瞭然だった。
おかしいことは何もなかった。
彼の腕の中にいる、梗が目を覚まさないことを省けば。
彼が狂ったように妹の名前を呼んでいることを省けば。
血の気のない梗を省けば。
梗の腕に〝藍〟と彫られた傷を省けば。
彼の口のまわりに、梗の血がついていることを省けば。
全てを悟ったあたしの中の、何かが切れた。