黒い翼
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「けーいー、呼ばれてるよー?」
6月12日金曜日。
高校の三年になったあたしは、クラスメイトに言われて昼休みの読書を一旦止めた。
人間とは必要以上に関わらないようにしている為、あたしは1人で読書をしていたのだ。
……シキには、ぼっちだと言ってからかわれたけど、気にしない。
「……はぁ…」
あたしは席を立ち、小さくため息を吐いた。
チクショウ。
もうちょっとで事件の犯人が分かるトコだったのに。
邪魔しやがって。
「こ~ら、ため息つかないの~」
さっきまでドアの近くにいた女子が、ムッとした表情であたしを見る。
「少しはモテない女子のこと考えなよ?あたしからしたらうらやましいんだから!!!」
ビシィッと人差し指をあたしに突き立て、どうだと言わんばかりにすばらしいドヤ顔を決め込む。
イヤ、ため息はそっちのことじゃないんだけどな。
とか思ったけど、いちいち訂正するのも面倒くさいし、あとでトラブルとか起きるのも嫌だから、黙っておく。
「アヤノいいこと言う~!」
ババ抜きをしている五人の女子のうち、一人の女子がギャハギャハと笑いながら言った。
「はーい」
あたしはそんな彼女を尻目に見ていつも通り暢気に言い、教室から出る。
廊下にいた背の低い男子について来てと言われ、どうせ告られるんだろうなぁ…と思いながら、あたしは彼の後ろを無言で、まるで影のようについて行った。
すれ違う人がチラチラとあたしとその男子を見て、ヒソヒソと話す。
「………………………」
黙れよ、煩いな。
正直あたしは今、読書の邪魔をされて気が立ってんだ。
昼休み中に犯人分かんなかったらどうしよう。
次の授業の担当、説教長いんだよなぁ…。