黒い翼
嫌なことを払拭させようと、あたしは勢いよく起き上がる。
勢いよくやり過ぎて、立ち上がった時フラフラした。
それを見ていたのか、シキがバカじゃねーのとケラケラ笑いながらあたしを見る。
「今に始まったことじゃないだろ」
あたしはシキみたいに文武両立は出来ない。
がんばってハイレベルなこの学校に入ったものの、マジでレベル高すぎてついて行くのがやっと。
常にちゃっかり成績が上位にあるシキとは違う。
「べんきょしねえで、本ばっか読んでるからだろ」
「……………………」
シキの口から出た珍しい言葉に、あんぐりと口を開ける。
「……俺がまともなこと言ったらそんなに変?」
いつもなら、確かにそうだな-とか言ってバカにしてくるのに、今日はちょっと変だ。
「それよりおまえ、小さいんだな」
「は?」
いきなりなんだ。
藪から棒に。
「なんとなく」
シキは、はは、と笑ってフェンスに靠れる。
確かに、高1の時と比べたら、シキはそれなりに成長しているし、あたしの身長はもう止まっている。
「なんだよ。シキは自分よりデカイ女がよかったのか」
わざと、残念がって相手の反応を見てみる。
「いや、そういうのじゃなくて。背も肩も胸も。全部、さ」
「…あ?」
真顔でそんなことを言うシキに一発お見舞いしてやろうかと思った。
「小さくて、捻ったらすぐに折れそうで…護らないといけないんだなって…」
だけどそれは、その言葉でその想いは打ち壊された。
まだ、真剣な顔して、ふざけているようには見えない。
もしかしたら、なんつってなーっていうオチかもしれないが。
「……それはどう受け止めればいい?保護してくれんのか?それとも告白か?」
あたしはそう聞かざるを得なかった。