黒い翼
「あ、そうだ」
ふと、思いついたように、京が俺を見る。
「ん?」
「シキ、不満があればちゃんとあたしに言って。直接。筆談でもいいから」
「お、おぅ?」
どうした、京。
付き合ってもないのに、まるでそんなことを示唆する言葉だぞ、それは。
「メールではそういうのナシな。メールするんなら寧ろ電話して。……メールだと色々信じられないから」
「分かった」
それは後で聞くとして、今は京の言葉に耳を傾ける。
「別に嫌われるかもだから聞けねーなんて考えなくていい」
「え」
「以心伝心なんかあたしには出来ないからね。ちゃんと不満、言って。できる範囲でなんとかするから」
「俺、情けないことも言うかもよ?それでケイがヤナ思いするかもしれないし、急に何かしらのスイッチ入るかもしんねーよ?」
慌てて、マジでホントにしそうなことを言う。
だけど京は、なに今更な話してんだよ、ばーかと、ふっと笑った。
あ、俺もう死ねる。
「そこも全部も含めて、好きになったんだろーが」
「……え」
これは夢だろうか。
「昔」
京が恥ずかしそうに言い、俺はハッと我に返る。
あ、昔の話ですか!
いや別にスケベなこととか考えてないけどな!
別にガッカリとかしてねえけどな!
「あー…あと、この前はありがと…ね。それと、ごめん」
この前というのは、どれだろう。
イマイチ分かんねえけどいっか!
「んじゃ」
そして京はそそくさと、この屋上から出て行った。