黒い翼


あたしらヴァンパイアは、餌となる人間をおびきやすくするため、顔が整っている。


だから「好きです、付き合って下さい!!!」ってゆーのがよくある。


話ししたことない人から言われた時なんか一番困るよね。


「え、アナタ誰ですか」って言いたくなってしまう。


もっと言えば見たことない人から言われたら、「え、この学校にいたんですか」とかちょっと酷いことをも言ってしまいそうになる。


寸止めしたあたしにどうか拍手を!


ってまぁ、こういう容姿してるんでイケメンからも、ブサメンからも告られることはあるんだけど。


あたしからすると、自分が好きでもない人からそう言われても…っていう。


中にはそんなこと考えないヤツもいるんだろうけど、あたしは正直、そんな人とは付き合いたくない。


まぁ、これも彼女たちにとっては贅沢な望みなのだろうけど。


なんて思っていると、いきなり男子がクルリとあたしの方に向きを変えた。


その場所についたのだろうか。


「俺、最近ようやく柊のことが好きって分かったんだ」


深呼吸をしてあたしに言うその男子は、よく見ると彼は一年の時のクラスメイトだった。


「…だから、付き合ってください」


そして彼はいつものように、照れることもせず、淡々と。


まるで演劇部が言うセリフのように、普通にスラスラと言った。


けどあたしの答えはいつも変わらない。
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