黒い翼
「……ア…」
「喋りたいの?」
目で訴える彼女に、僕は喋れるように、拘束を解く。
だけど、それだけ。
彼女の四肢に縛り付けてある鎖は外さない。
「外して」
冷たく、吐き捨てるように言う彼女。
「駄目だよ。梗は外したらにげるでしょう?」
「瀬来…」
「何度も言ってるでしょう」
「……っち…」
「梗は僕の、」
「お気を確かに。瀬来様」
彼女の低い声が、僕の言葉を遮った。
それは彼女に似ても似つかない、恐く低い声。
「梗は、2年程前に亡くなりました」
「え――」
じゃぁ、君は。
キミは。
「ダレ」