黒い翼
「……それは…血肉…だよな……?」
あたしは震える声で、すでに死んでいると思われるヴァンパイアと、さっき音を立てていたヴァンパイアに話しかける。
「…なに…やってんだよ……」
同族殺しは大罪だ。
それは強大な力を得て、その強すぎる力故に身を滅ぼすからだ。
「シキ!」
なんで、お前。
「っ!!?」
体に違和感を感じ、口の中が血の味がする。
自分の体を見ると、腸が下腹から出ていた。
「ゴプッ」
――なんで…
お前ほんと何やってんだよ。
霞んでいく視界に、目の前にいるシキが映る。
無表情で目が赤く、今日の朝みたいに冷たい瞳。
――こンの
「バッカッッ!」
あたしは最大限の力を出してまわしげりする。
だけどシキはいとも簡単にそれを躱し、背中側の右肩から左脇腹までザックリ引っ掻かれた。
「う゛っ」
何なんだ今日。
とんだ災難の日だな、全く。
なんて、冷静に今日を分析しながら倒れた。
「葵ィ…っ」
シキの名前を呼んでも、朝とは違って全然反応してくれない。
それどころか、腹を蹴られて壁に激突する。
血はもう止まっているけど、限界だ。
シキのバーカ。
死を覚悟して、あたしは目を閉じた。