黒い翼
「ここはxを代入して…」
「さっき求めたやつ?」
「そうそう」
ご飯を食べ、あたしは勉強を教えてもらっている。
こんなこと、付き合っている間に何度としたことだろう。
今もやってるようじゃ、まるで――
「さっきと同じ間違えしてますよ~」
シキに指摘されてはっと我に返る。
「…………………こうか」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「……シキ?」
ボンヤリしていたシキに声をかける。
「……ん?」
「眠いのか?寝るか?」
「いや、へーき」
心配するあたしを余所に、ふわりと微笑んだ顔に、どくんと心臓が跳ねた気がした。
「……そ?ならいーけど…」
「ちょっと…ボーッとしてた。ごめんごめん」
彼はそう言って笑う。
だけどあたしには、そのシキの笑った顔がひどく悲しんでいるように見えた。