黒い翼
「こンの……バッカ…が……」
思い切りギロリとシキを睨んでペッと血が混じった唾を吐く。
「け、京…おま、なんで……」
驚愕した表情を浮かべ、自分がしてしまったことを見る。
シキの鋭く尖った爪はあたしの肩を抉っている。
「…どうして……ここに梗がいるの…」
「あたし、は…梗じゃない…ッは……ぁ…」
だんだんと辛くなってきた気力を振り絞って伝える。
「しっかりしてくれ。梗は…あんたが殺したんだ」
「僕、が…?」
彼があたしの鳩尾を貫いている自分の左手を見る。
「僕…は、二度も……キミヲ…」
「ごぅ゛」
引き抜かれた左手であたしの顔をぺたぺたとさわり、愕然とする彼。
「キミ……は梗じゃない……違う…梗じゃない」
パニックになったのか、彼は頭を抱えて、喚きだす。
「違う…違う…梗?……梗はドコ?……梗…?…梗は?」
そして風が強く吹き、それは竜巻のようになって彼を覆っていく。
「おい、あいつ……」
「言う…な」
砂埃が舞い、思わず目を閉じる。