rain girl


「……いないのか」



ハルは溜め息を漏らすように、そう呟いた。



ヒカルは家にいない。



だとしたらどこだ?



全く見当もつかない。



中2の夏から口もきいてくれなかったヒカルは今もハルに手掛りでさえも残してくれないのだ。



ハルは途方に暮れていた。


家以外にハルの思い当たる場所は無い。



中2の夏、あのときまで一緒に遊んでいた場所も今はもう埋め立てられてしまって、かたいコンクリートになってしまった。



そこはシロツメクサが沢山あった、とても美しい花畑だった。



どうしてこんなにも綺麗なのに、あの人達は機械で踏み潰してしまうのだろう、あのときはそればかり思っていた。



唯一のヒカルとハルの思い出の場所だったのに。



それさえも今は跡形もなく消え去ってしまった。


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