イエナイオモイ


勇哉はとにかく優しくていつも大切にしてくれる自慢の彼氏。


だけど、たった一つだけ。



『唇フェチだもんね、あんた』



付き合いの長い真紀子は知っている。


あたしは大きな口が好き。


唇全体で包み込むような、食べられちゃうんじゃないかってくらいのキスが好き。


勇哉とは体も何度か重ねたけれど、いつだって小鳥みたいな軽すぎるキスばかり。



『自分から唇フェチだとか、もっと思いっ切りキスしてとか。そんな事絶対に言えないし』



そう送ったメールに真紀子からの返信は無かった。


ちょうどシャワーの時間かもしれない。


勇哉の唇にもっと触れられたら、どれだけ幸せだろう。


それが出来ないのは、彼の中にあるイメージを壊したり、嫌われるのが怖いのだ。



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