二つの甘い蜜
二つの甘い蜜
「日菜!」
私めがけて、スポーツタオルを投げてきた小高くんは、私がそれをキャッチすると、またドリブルを始めた。
小高くんは、バスケ部の練習が終わってから、いつも残って自主練習をしている。
その後ろ姿を眺めながら、体育館のステージに腰をおろした。
マネージャーの私も、いつからかその練習に付き合うのが日課になっている。
何度も何度も、ドリブルとシュートを繰り返す小高くん。
その間、どんなに念じてみても、一度だって私の方を振り向いてくれない。
この恋の行く先のようで、胸が苦しくなる。
少しぐらい私のことを見てよ。
そう思いながら、小高くんのスポーツタオルに顔を埋めた。
< 1 / 3 >