赫の守護〜無自覚溺愛吸血鬼〜
黒髪の娼婦
御者台の下でも、外を覗ける隙間はあった。
来るときは色々思う所があって風景を見ている暇などなかったので、何だか新鮮な気持ちだった。
城の敷地を抜けると少し林が有り、そこを抜けると暫《しばら》く野原が続く。
橙色だった空が徐々に明るさを無くしていき、街へ入る頃には辺りは薄闇に包まれた。
かと思うと、馬車は街の明るい場所へと進んで行く。
街灯だけでなく、密集している店の明かりが逆に眩しいほどの場所。
娼館街。