赫の守護〜無自覚溺愛吸血鬼〜
そうして何も答えれずにいるうちにクルスがたしなめる様に話す。


「だからアンジー、それはダメだって言っているだろう? 俺は君がキサラ様にもう一度会えばジューク様の事は諦めると言うから連れて来たんだ」

「ええそうよ、その通り。ただ、少し違うわね。私はジューク様の事、とっくに諦めているもの」

「じゃあ、どうして……」

クルスの質問に、アンジーは彼では無くキサラの方を向いた。

軽く微笑んではいるものの、その目は仄暗《ほのぐら》く見える。


「ジューク様とどうにかなりたいとは思っていないわ」

アンジーの細く繊細な指がキサラに伸ばされる。
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