赫の守護〜無自覚溺愛吸血鬼〜
「離して! 離してよぉ!」

アンジーの叫びを背中に受けながらキサラは走る。

見えなくなっても声だけは木霊《こだま》の様に響いて聞こえてきた。


「アンジー! 頼むから、落ち着いてくれ!」

クルスの必死な声も届く。


「うるさいっ! 離しーーっ!?」

だが、そんな声が突然途絶えた。

聞こえるのは自分の息の音だけ。


アンジーの声も、クルスの声も聞こえなくなる。

(何? どうなったの?)
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