君の声がききたい
沙和はタバコを消して立ち上がり、荷物を抱えた。




――『明日食堂でメシ食おうよ。また明日メールす……っ!』

すると…急に沙和が俺の腕を握って来る。



「沙和…どした?」


俺が顔を覗き込もうとすると、沙和は恥ずかしそうに俺の腕に顔をうずめる。




「……沙和?」

「………」


……!

うずめていた顔を離し、片手は俺を握りしめながら…もう片方の手で、沙和は話し始めた。




――『あと‥どれくらいで……手話覚えられる…?』


!!

昼間…電車の中で聞かれた質問を、また聞かれた……

俺は覚えたばかりで、ちょっとぎこちない手話で答えた。




――『んー…あと・・本当ちょっとなんだけど・・』

――『ちょっとって…どれくらい?』

――『んー……ちょっと・・だよ』


本当にちょっとなんだよな。





――『もう……覚えなくていいよ』

「は?」

――『覚えなくても大丈夫だよ。会話できてるじゃん…』


沙和はうつむき気味で言う。




――『俺が携帯とかノートで会話すんのが見てんの辛いって、お前が言ったんだろ(汗)悪いなって思うからって…』

――『そ、そうだけど…』

――『“けど”?』


沙和の顔がみるみる赤くなる。
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