君の声がききたい
安心したように笑う紗江子さん。



「沙和のこと…心配ですか?」

「うん…心配だね。毎日毎日‥あの子のこと考えてるよ」


紗江子さんは、タバコに火をつけながら言った。




「あの子の耳が普通なら…あんまり心配しないけどね。やっぱり普通の人よりは、心配な面は多いよ」

「そうですよね」

「でも‥心配心配って言って・・・あの子を甘やかしてばっかりじゃ…意味がないから…」




紗江子さんは、灰皿にタバコの灰を落とす。




「うちの両親がいないのは知ってる?」

「はい…お母さんは亡くなったって…」

「そう。父親は離婚して元々いなかったけど…母親は結構若い時に亡くなったの。私はまだ中学生だったなぁ…母親は亡くなるは、沙和は難聴になるは・・・自分は呪われてるとか思ったよ…」


「ハハ」と笑う紗江子さん。




「でも、辛くても生きていかなきゃならないじゃない?小さくて障害抱えた沙和を…私は必死で守ったよ…いっつも一緒にくっついて・・あの子の望むものは何でもしてあげた…」


紗江子さんは、懐かしむような口調で言った。




「でもさ…ある日気づいたんだよね。私‥沙和を甘やかしてるつもりで…実は見下してたんだって・・・」




紗江子さんは続ける。



「沙和は難聴だから…障害者だからって・・何でもやってあげるのって…優しさではなくて・・同情かなって気づいたの。私は満足しても、沙和のためにはならないって…」

「紗江子さん…」
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