君の声がききたい
紗江子さんの言いたいことは、なんとなくわかった。

俺も似たようなことを、ついこの間思っていた。

それを修也に話したばかりだし…




「沙和のことがあって…諦めていた自分の夢も・・別に諦める必要なんかないって気づいたの。だからそれから、沙和には何でも自分やらせたわ。もちろんあの子に出来ることをね。じゃないと…あの子ひとりではなんにもできなくなっちゃうもん」

「そうですね…」

「沙和がある程度、自分のことを出来るようになってきた頃だったかな。私の仕事先の…海外の転勤が決まったのよ」

「―――!」

「私…元々こっちでデザイナー関係の仕事をしててね。ずっと海外で働きたいって思ってた。日本でまあまあ成功していたうちの会社が、海外に進出できることが決まった時…嬉しかったわ。これはチャンスだって思った。でも、沙和のことは正直心配だった…行くとしたら、沙和を日本に置いていかなきゃならかったから」

「………!」

「でも…沙和のことを理由して・・自分の夢を捨てるのはどうかと思ったの…考えてみたら、そんなのおかしいわよね…」


紗江子さんは、フッと笑った…




「海外に転勤することは…親戚には反対されたわ。“あんな妹置いて行くなんて…薄情”なんてことも言われた。」

「………」

「でも私は、海外に行くことを選んだの。私は私の人生…沙和は沙和の人生を歩めばいいと思ったから………沙和自身も“寂しいけど‥お姉ちゃんが選んだ道だから、文句はないよ”って言ってくれたから」


ちょっと涙ぐむ紗江子さん。



「でもね…あっちにいくことを選んだくせに、毎日毎日沙和のこと考えては心配になってるのよ、私(笑)自分で選んだのにバカみたいよね」

「ハハ」


笑いながら、俺もタバコに火をつけた。
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