HERO
私の腕を掴んで、引き止める。


「痛っ!」


痛いのは、さっきずっと抑え付けられていたせい。


まだ、跡が消えない。



手加減とか、知らないのかわんこは。


私の反応に驚いて、すぐに掴んだ手を離す。



腕の跡を見てるわんこ。



「ごめんね...まだ痛い?」


「痛いし、許さない」



別に私、怒ってるわけじゃないんだ、多分。


ただ、申し訳なさそうにしてるわんこを、もうしばらく見ていてあげようと思って。



わんこは、私の腕をそっと掴んで、また跡を見る。


その跡を、親指で撫でる。
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