HERO
「言わない、絶対言わない!」


「え!なんで!」



言わないよ、言わないけど。


目が合って、キスすると思わせといて、騙されたような気がするから。



キス、させてよ。



唇が触れるだけのキス。


唇を離すと、わんこはあの困った顔で私を見てた。



前もこんなようなことあったな。


だから、わんこが言いたいこともわかってる。



「意味のないキスは、したら駄目、でしょ?」



わんこが口を開いて何か言おうとした瞬間、そう言ってやった。


ちゃんと言い訳だって考えてあるんだからね。



わんこは、まじまじと私を見てた。
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