HERO
なかなか口にしない私が焦ったかったのか何なのか。


わんこは、その手を動かし私の口に放り込んだ。



「おいし?」


ううん、悔しい。


私の心はわんこに遊ばれてる、わんこに自覚はないだろうけど。



それが、ものすごく悔しい。


わんこのくせに。



「美味しくない」


「え!嘘...ごめんね?」



こいつ、ほんとに自覚ないのかな。


その目で見ないで。



美味しくないなんて、嘘だもん。


嘘をついた罪悪感が襲ってくるから、その目で見ないで。



「う...運転しながらだから、味わかんなかった」


ほら、私馬鹿みたい、こんなわかりやすい言い訳なんかして。
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