HERO
「離して」



わんこは首を横に振って、離してくれない。


何度言っても、同じことの繰り返しだった。



「離してってば!」


「やだ、離さない」



強く言っても、離してくれないわんこ。



どうしたら、離してくれるかな。


どうしたら、忘れられるかな。



「わたしのこと、邪魔だった?お荷物だった?そりゃそうだよね、頼まれてここに置いてたんだから」


「美亜さん、俺のこと見てて、本気でそう思ってるなら美亜さんは大馬鹿者だよ」



そう言って、わんこはやっと抱きしめる力を緩めて体を離してくれたけど。


それでもまだ、腕を掴んだまま離してはくれなかった。
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