HERO
「ねえ美亜さん」



じっとわんこが私を見るから、目をそらす。



どうして。


どうして、嘘をついていたのは何か事情があるんだって思えなかったんだろう。


どうして、信用してあげられなかったんだろう。



「嘘、ついてごめんね。依頼者に、自分が依頼したことを絶対に言わないでほしいって言われてたから」



不思議なのは、依頼者の存在。


一体何のために、誰が、私なんかを。



心当たりなんて全くなくて、何だかよくわからない。



「でも、俺は会ったほうがいいと思ってる。いつか、美亜さんに会ってほしいと思ってた。だから、今から会いに行こう」



今からね。


...え、今から?
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