HERO
「美亜さん、そんなの後でいいから、ほら、行くよ」



そう言って、わんこは手を差し出した。


そうだ、さっき急に依頼人に会いに行くとか言い出したんだった。



誰なのか知りたいけど、怖い気もする。


だって全く予想できないから。



私のことを助けてあげてほしいとか、よろしくお願いしますとか、そんなこと思う人、この世に存在しないと思ってた。



でも。


きっとわんこが一緒なら、どんな人であろうと大丈夫な気がするから。



差し出された手を取って、わんこを見る。


わんこを見た理由は。



この、笑顔が見たかったから。
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