虹色フィルター
「ごめんなさいっ……」
私は立ち上がり、逃げ出した。
刺激に堪えられなくなった。
節電という大義の元、午後9時を過ぎると照明が3分の1にまで落とされるこのオフィス。
足元に気を付けながら歩みを進めていると、
温かいものが腕に触れ、
そのまま腕と近くの壁に閉じ込められた。
クリアブルーのフレームが、近い。
虹色だったフィルターは、
もう何の色も反射していない。
彼の視線をまっすぐに透過して、
私を喰らおうと縛り付ける。
「逃げんなよ。煽ったのはそっちだろ」
違う。
あなたの方よ。