ハーフドライド
「ひゃー、気持ちよかった。幹人も入ってくれば?」
「俺はいいよ」
肩にタオルをかけて下着にYシャツパジャマでぴょんとテレビの前のソファに膝を立てて座った。
幹人はテレビを見るのをやめて本を読んでいた。相変わらずわたしのほうなんて見もしない。
そのスカしてていつだって冷静な態度を無性にぶっこわしてみたくなるときがある。言っておくけれどこれはただの好奇心。
ただ、幹人が取り乱したり怒ったり感情を荒げるところが見てみたい。
「――ね、わたしのこれ、欲情することってあんの?」
だからその日は悪戯心で濡れた髪を持ち上げて、からかうように聞いてみた。
幹人はわずかに眉間を寄せて本から顔をあげた。そして真顔でこう言ってのけた。
「それ聞いて、なにが美帆の得になるの」
「ん、知りたいから?」
「――あるよ、もちろん」
わたしがあくまで軽い気持ちでそう言えば、数秒考え込んだあと幹人はさらりとそう返した。そのあとはいつもと変わらない顔で再び本に目を落とす。
(……あるよ?)
あぁ、これじゃあ聞いたほうがきまづいじゃない。
そう思ってわたしは映画を見るのも忘れて口を半開きにして彼を見ていた。
だけど、幹人はそれを気にする様子もない。