ハーフドライド
「あるの?じゃあなんで1年も何もしなかったの?」
「してほしかったの」
「ちがうけど……」
今日の幹人はいつにも増して“無関心”で、わたしはさびしくなってつまさきを抱えた。
すると幹人はぱたりと本を閉じてまっすぐにわたしを見た。
「美帆は俺を男だと思ってないだろうから何もしないんだよ」
「幹人だって、わたしのこと女だと思ってないじゃない」
沈黙が二人の間をくすくす笑うように漂った。ただ、くだらないバラエティ番組の笑い声が陳腐に室内に響いて。
わたしはこの話をやめたくてたまらなくなった。またいつものように重苦しさとは無縁の間柄で楽しくやりたくなった。
「……美帆さ、」
「ん、なによ」
「俺のこと、どんだけなめてんの?」
幹人は深々とため息をはき、その変な眼鏡を外した。わたしより長いんじゃないかってくらい長い睫毛が頬に影を落とす。
「別になめてないよ」
「年下だしさ、今まで大目に見てあげたけど、ちょっと調子乗り過ぎだよ」
「な、なにそれ、ちょっとどういう――」
憤慨するわたしに突如覆いかぶさってきたのはキャスターの残り香を纏ったわたしの知らない誰かだった。