ハーフドライド
「ずっとずっと、耐える側の身にもなれって」
「……ね、痛いよ、おりてよ」
急にソファに押し倒されて右腕の関節が変な具合に曲がっていた。
こんなに身長あったっけ。普段座って本ばっかり読んでるから気づかなかった。
それにしてもどういう風の吹き回しだろう。お酒は飲まないはずだけど、だとすれば熱でもあるんだろうか。
「1年もさ、関心ないふりするのってどんなかわかる?」
「……はぁ?なんのこと?からかってんならやめてよ、洒落にならないから」
「からかってないよ、大真面目」
幹人は普段本に落としているときよりほんの少し熱の籠った瞳でわたしの双眼をじっと射抜いた。
それから生乾きのわたしの髪をするりと手に絡めて、顔をうずめる。
「こんなの目の前にしてさ、どれだけ大変だったか、わかる?」
「……なにそれ、いつもの幹人らしくないよ。だって、……有り得ないじゃん。そういうの興味ないと思ってた」
乾いた笑いで追いつかない頭から絞り出すように虚勢を張るわたしを見下ろして、幹人は今までに見たことのない狡猾な笑みをにやりと浮かべた。
「おおあり、ただ隠してただけ」
――なに騙されてるの、やっぱりまだ子供だね美帆は。
いつもより格段に饒舌にそんな科白を吐いて、言い返そうとしたわたしの口を問答無用で乱暴に塞いだ。