Yシャツとネクタイと
インスタントのコーヒーを淹れて高橋さんのところへ持っていくと、ちょうどこちらに向かってきた高橋さんと出会ってしまった。
背の高い高橋さんが驚いたように私を見る。
私の目線の先に高橋さんの襟元があって―――。
開襟になった首元からふだんは隠されているきれいな鎖骨が、見え隠れする。
思わず、鼓動が跳ね上がる。
「えっと、あの、どうぞ」
「淹れてくれたの? 嬉しいなあ」
差しだしたマグカップを高橋さんは目を細めて受け取った。
高橋さんが席について、私も入力の続きを始める。
カタカタと互いのキーを叩く音が響く。
高橋さんに視線を送ると、コーヒーを美味しそうにすすりながら、パソコンに真剣な表情で向かっていた。
よし、これで終わり。
プリントアウトは明日の朝一にでもして、今日はもう帰ろう。
そう考えて、バッグを手にして立ちあがった―――その時。
「なあ、もう帰んの?」
呼び止めたのは、高橋さん。
「はい。お疲れさまです」
「ちょっと待って」
どういうことだろう。
首をかしげていると、高橋さんはにやりと笑いながら言った。
「腹減ったから俺も帰ることにした。一緒に帰んねえ?」
Yシャツとネクタイと【完】