空には届かない
タイトル未編集
春の夜の匂いってなんだかせつなくなる。
待ち合わせスポットである駅前の噴水。
青いLEDライトに照らされて駄菓子屋に30円で売ってるチューブゼリーにそっくりだと思った。
ぼんやりと青い噴水を眺める。
「藤。」
「うん。」
「きれいだね。」
「うん。」
史郎はわたしの素っ気ない態度を気にするでもなく隣でわたしの手を握り締めていた。
――――ねえ、藤ちゃん?
そうだ。
いつもなら、優子さんもここにいた。
きっと笑ってた。
きっと、わたしはいつもみたいに優子さんを見上げてた。