アンバランスな手首
――あれは、一か月ほど前のこと。
「石田さん、持ちますよ」
大量のファイルを持ちよろよろと歩く私に、偶然通りかかった彼が声をかけてきたのだ。
「じゃ、半分だけ」
台車でも用意すればよかったと後悔していたので、彼の申し出は本当に助かった。
「半分だけなんて、けちけちせずに」
けちけちって使い方が微妙に違っている気がすると思った瞬間、私の視界はぱっと開けた。
「あ、ありがとう」
その時、私の目に飛び込んできたのが、彼の手首だった。
ごつごつとした骨ばった、力強い彼の手首。
彼の外見とその手首のギャップに、私は見事にやられてしまったのだ。