アンバランスな手首

 会社を出ると、雨が降っていた。

 やられた、と思った瞬間「入っていきませんか」と、目の前に差しだされた傘。

 そして、それを握る手。
 ごつごつとしたその手首に、胸が高鳴る。

「……で、でも」

 怯む私の手を取ると、彼はそれを彼の手首の上にのせてきた。

 熱い熱でしびれていく指先。
 感じる、彼の体温。
 そして、手首。
 とけそう。


 ……目眩がする。
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