ゲーム
ついに、やっと聞ける。
心の中でガッツポーズをする。
なのに、いきなり手首を掴まれた。
手加減なしの強い力で。
次の瞬間――
彼の顔が至近距離にまで迫って、あっ、と小さく呑んだ息は形にならなかった。
目を瞠る。
噛みつくように唇を奪われていた。
ゆっくりと目を閉じると、驚くほどの唇の柔らかさに溺れていきそうになる。
なんて気持ちのいいキスなんだろう。
離れたのは、彼からだった。
それでも、掴んだ私の手を離さない。
今度は耳許に彼の顔が近づいていく。
「お前のことが好きなんだよ」
低いささやき。
途端に耳たぶがかあっと熱を帯びる。
聞きたかった、その言葉。
やっと聞けた。
バンザイして喜びたいはずなのに、私ってば、いつまで片意地を張り続けるんだろう。
いつまでも返事をしない私に業を煮やしたのか、彼が
「お前はどうなんだよ?」
「どうって?」
「俺のこと、好きじゃねえのかよ?」
なんでそんなこと言うかな。
私の気持ちなんて、とっくの昔にお見通しのはずなのに。
「……き、だよ」
震える声は吐息のように消える。
「なんて言ったか聞こえねえなあ」
「好き、だよ」
にやり、と彼は不敵に笑う。
勝ち誇るように。
そう、ゲームは最初から私の負けだった。
好きになったのは、私のほうなんだから。
ゲーム【完】