伊坂商事株式会社~社内恋愛録~


翌朝。



山辺さんには休めと言われたけれど、さんざん迷った末、私は一旦家に帰り、着替えて会社に向かった。

本当はまだ怖かったけれど、でもやっぱり休んだら負けたみたいだし、何より昨日の山辺さんが言った『俺に任せて』とか『死刑』だとかいう言葉が引っ掛かっていたから。


山辺さんは何をする気なのだろう。


私が会社に到着したのは、始業時刻ぎりぎりだった。

だけど、エレベーターを降りてみたら、人事課のある7階の廊下には、なぜか人だかりができていて。



「あ、美紀さん!」


マリちゃんが私を見つけて駆け寄ってくる。



「何、この騒ぎ」

「それが、大変なんですよ! 今朝、私が来てみたら、阿部課長の解雇通告書があって! ほら、あそこに張り出されてるでしょ!」

「……え?」

「理由がわかんないからみんな色々と噂してて! もう仕事どころじゃないですよ! 美紀さんはどう思います?」


山辺さんが何かしたんだ。

そう思った瞬間、私は駆け出していた。



「ちょっ、美紀さん?!」


5階の企画課まで急ごうと、階段に向かった時。

意外にも山辺さんはすぐに見つかった。


階段横にある小会議室のドアに寄り掛かるように立っていた山辺さん。



「あれ? 美紀ちゃん、どうして? 休めって言ったのに、ダメじゃない」


山辺さんの隣には、宮根さんと、莉衣子。

それから企画課の人たちもいる。



「美紀の馬鹿! どうして私に相談してくれなかったのよ!」


いきなり泣き出した莉衣子は私に抱き付き、
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