伊坂商事株式会社~社内恋愛録~
経理課は、とにかく来訪者が多い。
会社の収支を計算するだけでも大変だというのに、訪れた人と話したり、こまごまとした領収書の処理までしなきゃいけない。
はっきり言って、それが私をパンクさせる原因でもある。
「あれ? そういえばきみ、見ない顔だね。新人さん?」
山辺さんとやらは、いきなり私の方を見た。
どきりとする。
なのに、答えのは岸先輩だった。
「そうなんです。私が教育係をしているんです」
誇らしそうに言っちゃって。
さっきの姿とは別人みたいだ。
「いいね、何だか初々しくて。昔の自分を思い出すっていうか。この時期は毎年思うよ」
物腰が柔らかくて、素敵な人だ。
世の中、こういう紳士的な人ばかりだったいいのにと、心底思う。
なのにまた、岸先輩は横から口を挟んでくる。
「山辺さんの新人時代って想像できませんね」
「そうですか? みんな普通にあるじゃないですが、新人の頃」
「でも企画課の奇才とまで言われる方のそんな姿はやっぱり私には想像できませんよ」
「それはみんなが勝手にそう言ってるだけです。俺なんて、これでもいっぱいいっぱいで仕事してるんですよ、ほんとは」
「謙遜しちゃって。うふふ」
うるさいなぁ、もう。
目の前で世間話をされると、余計、気が散って集中できないのに。
そんな私の念が通じたのか、山辺さんとやらは、「じゃあ、俺はそろそろ」と、片手を上げ、
「きみも今は大変だろうけど、頑張ってね」
爽やかに去っていく。
その笑顔には、ちょっとだけ癒された。
会社の収支を計算するだけでも大変だというのに、訪れた人と話したり、こまごまとした領収書の処理までしなきゃいけない。
はっきり言って、それが私をパンクさせる原因でもある。
「あれ? そういえばきみ、見ない顔だね。新人さん?」
山辺さんとやらは、いきなり私の方を見た。
どきりとする。
なのに、答えのは岸先輩だった。
「そうなんです。私が教育係をしているんです」
誇らしそうに言っちゃって。
さっきの姿とは別人みたいだ。
「いいね、何だか初々しくて。昔の自分を思い出すっていうか。この時期は毎年思うよ」
物腰が柔らかくて、素敵な人だ。
世の中、こういう紳士的な人ばかりだったいいのにと、心底思う。
なのにまた、岸先輩は横から口を挟んでくる。
「山辺さんの新人時代って想像できませんね」
「そうですか? みんな普通にあるじゃないですが、新人の頃」
「でも企画課の奇才とまで言われる方のそんな姿はやっぱり私には想像できませんよ」
「それはみんなが勝手にそう言ってるだけです。俺なんて、これでもいっぱいいっぱいで仕事してるんですよ、ほんとは」
「謙遜しちゃって。うふふ」
うるさいなぁ、もう。
目の前で世間話をされると、余計、気が散って集中できないのに。
そんな私の念が通じたのか、山辺さんとやらは、「じゃあ、俺はそろそろ」と、片手を上げ、
「きみも今は大変だろうけど、頑張ってね」
爽やかに去っていく。
その笑顔には、ちょっとだけ癒された。