伊坂商事株式会社~社内恋愛録~
「ほんと、うちと営業課って仲悪いわよねぇ。いつもいつも経費のことで衝突ばかり」

「ね。あれくらい認めてあげればいいのに。宮根さんが可哀想よ」


岸先輩と他の先輩が、ひそひそと言い合う。



確かに私も、接待費なんだからいいじゃないと思った。

でも、『いいじゃない』が積み重なると、とんでもない額になるわけで。


すべてを許すのもどうかと思うし、そうなってくると、倉持課長ばかりが悪いとも思えない。



「東村さんもそう思うでしょ?」

「いや、私は……」

「何? 私たちの意見が間違ってるって言いたい?」

「ち、違います。私も同じ意見です」


でも、言えない。

特に岸先輩にだけは逆らえない。



「でしょう? 倉持課長ってひどいわよねぇ?」

「あ、……はい」


だんだん、話が悪口みたいになってきた。

私はこういうのが嫌なんだけど、でもやっぱりそうとは言えないわけで。



「はぁ……」


聞こえないようにため息を吐く。



ここが企画課なら、きっとこんなことはないだろうと思った。

実際のことなんて知らないけれど、でもあんな素敵な人たちがいる課が羨ましい。


なのに、ほんと、どうして私はここに配属されてしまったんだろう。


胃がきりきりと痛む。

その度に、自分がひどいストレスを感じていることを知る。



「はぁ……」


もうやだよ。

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