伊坂商事株式会社~社内恋愛録~
「普通に考えれば、今、班長をしている山辺か原口の辺りが妥当だろうとは思うんだがな。と、いうよりも、誰もがそうだと思うだろう」
「はい」
「しかし、企画課というところは、自分が、自分が、という人間ばかりだ。山辺も原口も、篠原だってその典型だ」
「……はい」
「だが、沖野は違う。あいつは自分から率先して意見は言わないが、人の意見をきちんと聞いて、妥協点を見つけてよりよい落としどころに導ける力がある。広くまわりを見ることができる」
「はい」
「まぁ、まとめ役だな。しかし、課長というポジションでは、それがとても大事なんだ。うちみたいな競争心を煽っている部署では、特に。そしてそれは、誰にでもできることじゃない」
「そうですね」
「それが、俺が沖野を推す理由だ。あいつは中途採用だからとか色々とあるだろうが。でも前の会社でもそういうことをしていたらしいし、問題はないんじゃないかと思う」
「課長のおっしゃっていることはわかりました。でも、それをどうして私に?」
課長はぐいと私に顔を寄せる。
「だからこそだ。あいつにはまず先に、班長を経験させなければならない。そこで篠原が抜ければ、正直、ちょうどいいんだ」
「……それは、そうなんでしょうけど……」
「もっと正直なことを言えば、あいつをずっとお前だけの補佐にしておくのはもったいないと思っている。有益ではない」
ばっさりと切り捨てられたような気分だった。
私の所為だと言われているようで。
「まぁ、お前らの関係は、見ていればわかる。それをどうこう言うつもりもない。が、企画課長としての立場で言わせてもらえば、公私混同はしてほしくないというのが実際のところだ」
「私はそんなつもりじゃ」
ない、とも言い切れない。
言葉に詰まり、私は顔をうつむかせた。
「沖野はあまり欲がない。それが困るところではあるんだ。だが、それも篠原がいるからという理由が少なからず関係していると思えなくもないし」
「………」
「とにかく、その辺も含めて、沖野ともよく話し合え。もちろんこの件は絶対に他言無用を願うがな」
私は「はい」としか言えなかった。
「はい」
「しかし、企画課というところは、自分が、自分が、という人間ばかりだ。山辺も原口も、篠原だってその典型だ」
「……はい」
「だが、沖野は違う。あいつは自分から率先して意見は言わないが、人の意見をきちんと聞いて、妥協点を見つけてよりよい落としどころに導ける力がある。広くまわりを見ることができる」
「はい」
「まぁ、まとめ役だな。しかし、課長というポジションでは、それがとても大事なんだ。うちみたいな競争心を煽っている部署では、特に。そしてそれは、誰にでもできることじゃない」
「そうですね」
「それが、俺が沖野を推す理由だ。あいつは中途採用だからとか色々とあるだろうが。でも前の会社でもそういうことをしていたらしいし、問題はないんじゃないかと思う」
「課長のおっしゃっていることはわかりました。でも、それをどうして私に?」
課長はぐいと私に顔を寄せる。
「だからこそだ。あいつにはまず先に、班長を経験させなければならない。そこで篠原が抜ければ、正直、ちょうどいいんだ」
「……それは、そうなんでしょうけど……」
「もっと正直なことを言えば、あいつをずっとお前だけの補佐にしておくのはもったいないと思っている。有益ではない」
ばっさりと切り捨てられたような気分だった。
私の所為だと言われているようで。
「まぁ、お前らの関係は、見ていればわかる。それをどうこう言うつもりもない。が、企画課長としての立場で言わせてもらえば、公私混同はしてほしくないというのが実際のところだ」
「私はそんなつもりじゃ」
ない、とも言い切れない。
言葉に詰まり、私は顔をうつむかせた。
「沖野はあまり欲がない。それが困るところではあるんだ。だが、それも篠原がいるからという理由が少なからず関係していると思えなくもないし」
「………」
「とにかく、その辺も含めて、沖野ともよく話し合え。もちろんこの件は絶対に他言無用を願うがな」
私は「はい」としか言えなかった。