伊坂商事株式会社~社内恋愛録~


瑛太の唇を受け入れる。

瑛太は荒い呼吸を整えながら、私の上から退いた。


私は馬鹿だから、結局は瑛太の誘いを断れない。


瑛太がこの一瞬だけでも私を見てくれてるなら、それでいいとすら思ってしまって。

だからこそ、いいように扱われてるのかもしれないけど。



「最近、どう?」

「何が?」

「カレシ作る宣言してから、少しは進展あったかなぁ、と思って」

「気になる?」

「何だよ、もったいぶって」


瑛太は私に腕枕してくれながら、煙草を咥えた。

間近で見る瑛太の喉仏が好き。



「この前、宮根さんに話し掛けられちゃった」

「うっそ。お前が?」


ちょっと大袈裟な言い方をしてしまったけれど、効果てきめん、瑛太は驚く。



「そうよ。悪い?」

「どうせ仕事でだろ?」

「でも、そうやって徐々にお近づきになればいいのよ。その理屈でいくと、山辺さんとだって、接点があればどうにかなるでしょ」

「つまり、マリはまだ誰とも恋愛には発展してないわけだ」

「なっ」

「喋ったからどうだとか、少女マンガじゃないだろ。夢見る夢子かっつーの」


ぴしゃりと言い捨てられ、私は顔を赤くした。

瑛太はそんな私を鼻で笑いながら、



「マリは頭の中で恋愛してるだけなんだよ。恋に恋してるっていうか。それを現実と混同するなよ」


私は唇を噛み締めた。



「何よ! 私のこと馬鹿にして!」
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