伊坂商事株式会社~社内恋愛録~
3日経った。
生理はまだこない。
不安が日を追うごとに確信に近くなっていく。
でも、検査なんて怖くてできない。
もしも陽性反応が出てしまったら、現実を直視しなくちゃいけなくなるから。
要は私は、逃げているのだ。
だけど、日に日に、悩み過ぎてる所為なのか、それともツワリというやつの所為なのか、私の体調は悪化していった。
だから余計、それがまた不安に繋がって、私は負のループの中に落ちていく。
社食の近くでぼうっとしていた時、瑛太と目が合った。
「マリ」
「何よ。会社では話し掛けないでよ」
「どうしてだよ。同期なのに無視する方が変だろ」
目を逸らしてみても、それが瑛太にまでは伝わらない。
言いたい言葉を、私はぐっと飲み込んだ。
「なぁ、今晩、忙しいか? 久しぶりに会わないか?」
「瑛太の頭の中にはそれしかないの?」
私はこんなに悩んでいるのに。
子供ができたかもしれないのに。
「私もう瑛太とは会わない」
「何? ついにカレシできたってこと?」
そんなこと、もうどうだっていい。
「関係ないでしょ! とにかくもう二度と、瑛太とは会わないから!」
勢い任せに言った。
瑛太はむすっとした顔をし、「じゃあ、いいよ」と言って、背を向ける。
違うの、と言って、追いかけられたら、どんなによかったか。