伊坂商事株式会社~社内恋愛録~
所詮、私は、瑛太の中ではそれで終わる程度の存在でしかなかったのだ。

息を吐き、嗚咽をこらえていた時、



「ねぇ、きみ、人事課の子だよね? 大丈夫? 顔青いけど」


はっとした。

宮根さんが私を覗き込んでいたから。



「あ、だ、大丈夫です」


別の意味でドキドキした。



「そう? ならいいけど。調子悪いなら早退させてもらいなよ?」

「は、はい」


全然関係ない宮根さんでも私の異変に気づくのに、なのにどうして瑛太は気付かないのか。

もういいと、私も心底思った。



「ありがとうございます、宮根さん」


今日、仕事が終わったら、真実を確かめようと思った。

もしもできてたとしたら、子供を堕ろして、もう二度と瑛太と関わらないようにすればいいだけだし。


万が一だけど、たとえ産むとしても、私はひとりで育てていこうと決意した。


どちらにしろ、これは私自身の問題だ。

瑛太なんか関係ない。



私は宮根さんに頭を下げ、きびすを返した。



それからの仕事は、今まで以上に手につかなかったけれど、でも、美紀さんも私の異変には気付いたらしく、しきりに「大丈夫?」と言ってくれた。

優しい人ばかりだと思ったら、泣けてきた。


自分の情けなさとか、瑛太へのまだ少し残る未練とか、子供ができていたらとか。


私の頭の中は不安でいっぱいになりすぎていて。

とにかく押し潰されてしまいそうだった。

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