伊坂商事株式会社~社内恋愛録~
「結婚しよう」
私の部屋に連れて帰られた。
狭いワンルームの中、私をベッドに座らせた瑛太の開口一番はそれだった。
「結婚しよう、マリ」
私は目を見開く。
何の冗談なのかと思った。
「そんな、義務みたいに思われたくないし」
「何でそう、いつも卑屈なんだよ、お前は。俺はずっとお前のこと好きだったよ」
「……え?」
「でも、新人だったし、仕事でも今も半人前のままだし、収入少ないし、実家暮らしだし。こんなださいのに言えるわけないだろ」
「………」
「だから、お前がカレシ作りたいと思うなら仕方ないと思った。山辺さんや宮根さんに憧れるのだって仕方ないって思ったんだ」
「………」
「だけど、今日、あんな場面に出くわして、そしたら自然と体が動いてた。やっぱり俺はマリが好きなんだよ」
瑛太は私を真っ直ぐに見て、
「こんな俺だけど、結婚してくれないか」
涙が溢れた。
私はコクコクとうなづく。
「私も瑛太のこと大好きだった」
瑛太に抱き付き、私はわんわん泣いた。
瑛太も泣いていた。
刹那、お腹に鈍痛を感じ、私は瑛太を押し退けてトイレに駆け込む。
「マリ?!」
生理が、きた。
そしたらまた、安堵なのか何なのかわからない涙が込み上げてきて。