伊坂商事株式会社~社内恋愛録~
午後7時。
あぁ、疲れた。
こう毎日、朝も昼も夜も、休みの日でさえ関係なく働いてる自分は、とんでもないワーカーホリックじゃないかと思えてくる。
俺、仕事嫌いなんだけどな。
階段横にある、自動販売機のある休憩スペースのベンチに、俺はよろよろと腰かけた。
「あー、もう。やってらんない」
思わず声に出して毒づいた時、
「あれ? 宮根くん?」
ふと顔を向けると、階段をのぼってきた山辺さんが。
俺は聞こえないように小さく舌打ちする。
山辺さんはいつも通りの爽やかさで、
「どうして5階には自動販売機がないんだろうね。いいよね、営業課は」
山辺さんは自動販売機に小銭を入れ、コーヒーを買った。
そしてご丁寧にも、もう一本買って、それを俺へと差し出してくる。
頼んでもいないのに、恩を売られた気分になる。
「残業、大変そうだね」
「まぁ、そうですね。俺ほとんど外まわりなんで、書類が溜まってて。こんな時間じゃなきゃ落ち着いてデスクワークできないおかげで、いつも残業ですよ」
「持ち帰ればいいのに」
「嫌ですよ。家でまで仕事のことなんて考えたくもない」
「そう? 俺は家の方がリラックスできて、会社でよりいい案が浮かぶんだけど」
「企画課と営業課は仕事自体が違うでしょ。比べないでくださいよ」
「それは失礼」
早くいなくなれよ、このエセ爽やか野郎。
こんなに疲れてる時に、どうして俺がしのちゃんの元カレと楽しくお喋りしなきゃいけないんだっつーの。
なのに、願いも虚しく、山辺さんがここから離れる気配はなくて、