幼なじみとの距離
「なんだよ、可愛くねぇな~。」
『…悪かったわね。可愛くなくて!』
「兄貴の結婚式の日だっていうのに何拗ねてんだよ。あぁ、千にぃを嫁に取られるからか?」
「人をブラコンみたいに言わないで!」
確かにお兄ちゃんの事は好きだけど、お嫁さんになる人は良い人だし、そんなに寂しくもない。
私が出来ないのは兄離れじゃない。
「なんだよ、本当に機嫌わりぃな。そんなんじゃ男にモテねーぞ」
「なっ…そんなの瞬ちゃんに言われたくないし!っていうか、何でわざわざスーツなの?」
姿見の前、ネクタイを結びながら言う瞬ちゃんを横目で見てドキッとしたのを誤魔化すように可愛くない言い方をする。
「だって、結婚式で学ランでなんてなんか嫌だし。千にぃが貸してくれるっていうからさ。それに、誰かさんと違って綺麗なお姉さんとか居るかもだし?」
――ズキッ
瞬ちゃんの言葉に胸が痛む。
分かってた事だけど、瞬ちゃんから見たら私なんて子供で、妹みたいなもんでしか無くて、恋愛対象としてなんて見られてない。
私だって、今日はいつもより全然お洒落して、メイクだって、髪だって綺麗にしたのに…。