くすぐったい、…でも 【密フェチ】
いつものように隣に座っていた彼と、ふとした拍子に机の下で手がぶつかった。
とっさに手を引っ込めようとした、そのとき。
「……っ」
電流が、走った。
突然絡みついてきた彼の指。
そして、あたしの手のひらを妖しくなぞる爪……。
驚いて隣を見たけれど、目は合わなかった。
彼は正面を向いて何食わぬ顔で講義を受けていた。
その間も机の下では、絶え間なく指を動かしたまま――
「おはよ。レポートやってきた?」
「……うん」
それ以来、講義中の秘め事は二人の暗黙の了解になっている。
表面上は今まで通り、ただの友達関係で。
なぜ、彼があんなことをするのかは分からない。
かといって尋ねる勇気がなかったのは、あたし自身、彼の指に異常に感じていたから。