くすぐったい、…でも 【密フェチ】
その日も彼が隣に座ってきたけれど、あたしは徹底的に彼を無視した。
だって、これ以上触れたら彼を諦められなくなるから。
一人占めする権利は、あたしにはないのだから。
「あっ……」
シャーペンが机から落ちた。
とっさに手を伸ばして拾おうとした瞬間
あの指にあっさり捕らわれた。
“スキだ”
手のひらをなぞった文字。
信じられなくて、隣を見て、初めて講義中に目が合った。
今にもキスされそうな距離で。
……“あたしも”
これからは1人占め。
その指でもっと、くすぐって。
あたしの全てを。
-END-