密空間
彼はそれ以上は何も言わずに左折のウィンカーを出した。
眺める車窓はだんだん見慣れない景色を映していく。
次第に街灯がなくなって、会話もなくなって。
小刻みな振動と心地よいBGMに誘われるように、私は眠ってしまっていた。
「先輩、起きてください」
呼ばれて目を開く。
視界に広がったのは、私に覆い被さる生意気な顔だった。
助手席のシートはいつの間にか倒されている。
シートベルトに固定されている私は、
腰回りだけでなく
両脇まで彼の腕に閉じ込められている。