眼鏡をはずして


「佐伯、ちょっと来い。」

先輩に呼ばれ、強引に連れ込まれたのは来客用の個室。


「お前、さっきから顔赤い」


顔を近づけたレンズ越しの瞳が、イタズラに笑う。


「風邪でもひいたか?へそ出して寝てるからな」


「圭ちゃ…」


「シィ。“先輩”だろ?」


そう言って、彼は容赦なく唇を奪っていく。

息をする隙も与えない

絶え間なく訪れる濃厚な甘い感覚。


思わず苦しくなって、押し返そうとした腕を、
彼の腕が壁に押し当てる。


「ヤバい、俺“鬼先輩”に戻れないかも」


そう言うと、彼はそっと眼鏡を外した。


――眼鏡

それは理性との境界線



[完]

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