背中に手


いつの間にか怒りは治まり、その後ろ姿に、あたしは思わず笑ってしまった。


本当、昔っから変わってないなぁ。



あたしはこの不器用な後ろ姿をずっと追い掛けてきたんだよね。去年の夏に焼けてた肌が未だに残ってる腕とか、一生懸命走る姿とかに、あたしはいつも憧れてたんだよね。


あたしはそんな事を思いながら、無性にその不器用な後ろ姿に抱きつきたくなる衝動に陥ったからしてやった。





「……なんだよ」

「へー、ふーん。謙吾君はそんな事を想ってくれてたんだね。うれしー」

「そのわりには善意を感じないんだが」

「そう?」


始めて会った時はあたしの方が大きかったのに、今じゃ全然違う。背はばからしても、あたしのと全然違う。でも、昔からこの背中は温かくて謙吾の匂いがした。


正面からは無理でも、後ろからならってあたしはよく抱きついたもんだ。正直今では正面からじゃなくてこっちの方が様になるし、何よりも落ち着くんだ。




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