背中に手

それと謙吾鈍いし気付いてないっしょっ。だからあたしはこの背中にこっそりとキスだってしてやった事もあるんだから。これは今も本人には内緒だけどね。


肩に顎を乗せればそこからは真っ赤な耳が見えた。

きっと顔を見れば真っ赤に違いない。普段はその面を拝んでやろうと意地らしくなるけど、今日はそう思わなかった。

久し振りってのもあるけど、そんな気分にはならなかったの。今はこの時間を大切にしたいって……。




あたしは少しの期待を込めてもう一度さっきの話をした



「ねえ、行こ?」

「やだ」

「ええ!この雰囲気なのに酷くない?」



唇を尖らせブーブーと文句を言ってるあたしに、彼は顔だけを振り向かせた。


「嘘」

ベットから立ち上がった謙吾は、呆然としているあたしの方へと振り向いた。


まだ顔が若干赤いままの謙吾は、唇を尖らせて


「ほら、行くんだろ」


と財布と携帯を持ち部屋から出ようとする謙吾に、あたしは急いでバッグを持ち謙吾の後ろ姿を追っていった。





昔は届かなかったけど、今は十分に近いあなたの背中に、今はあたしもその横に立って歩いていくんだから



簡単に謙吾に追いついたあたしは、その背中に手を当てて、笑ってやった



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